ウクライナはなぜNATOに加盟したいのか?メリットは何?
NATO加盟に向けた経緯は?
加盟が認められていない理由は?
ロシアにとって、なぜウクライナのNATO加盟は許せないのか?
NATOがウクライナを助けない理由は?
この疑問にこたえます。
国際NGOの現役スタッフが分かりやすく解説します。
結論から言うと、この点が分かります。
- NATO(北大西洋条約機構)とは対ロシア軍事同盟
- ウクライナは2002年から手続きを進めてきましたが、「NATO加盟に向け前進しているが、すぐに加盟することはない」とされています。
- その一番の理由は、ロシアとの領土問題です
- ロシアはNATOの拡大を脅威とし、ウクライナのNATO加盟に反対しています
- ロシアのウクライナ侵攻に対し、NATOは非加盟国への軍事協力は控えています
具体的に見ていきましょう。3分ほどで読めます。
そもそも、NATOとは?
一言でいうと、NATO(北大西洋条約機構)は対ロシア軍事同盟です。
東西冷戦が激しくなった1949年、米国や英国、フランスなど、いわゆる西側諸国によって調印された北大西洋条約に基づき設立されました。
加盟国の領土と国民の防衛を最大の責務としており、加盟国のどこか一国が武力攻撃を受けた場合は、全加盟国に対する攻撃とみなして集団的自衛権を行使すること(条約第5条)を規定しているのが特徴です。(注3)
- 加盟国:30カ国(創設時点では12カ国)
- 加盟国軍隊:計約332万人(2021年推計値、外務省より)
- 加盟国の国防費総額: 約1兆485億米ドル(同)
ウクライナがNATOに加盟したい理由
ウクライナはNATOへの正式な加盟は認められていませんが、ソ連が崩壊した1992年以来、NATOとパートナーシップを結んでいます。
1997年、ウクライナ・NATO委員会を設立し、安全保障上の懸念を議論し、NATOとウクライナの関係を促進するための場を設けています。
▽ウクライナがNATOに加盟するメリット
- ウクライナの国際的な軍事的後ろ盾が大幅に増える
- ウクライナ国内でのNATO軍の行動が可能になり、ウクライナ軍メンバーとともに行動できるようになる
- ロシアへの抑止力をえられる
- NATO加盟により、ウクライナはより欧米寄りになり、もう一つの政策目標である欧州連合(EU)への加盟可能性が高まる
- ロシアの勢力圏からの脱出
NATO加盟手続きと経緯
ウクライナは「NATO加盟に向けて前進していますが、すぐに加盟することはない」とされています。
NATO加盟国は、「北大西洋地域の安全保障に貢献できる」のであれば、基本的にヨーロッパ諸国であれば誰でも加盟できます。
加盟を希望する国は、加盟行動計画に従って、安全保障と政治政策についての詳細な申請手続きを行います。(この手続きに20年かかる場合もあります)
そして、次の基準をもとに、全会一致で新加盟国を承認するしくみです。
- 民主主義が機能しているか?
- 他国との領土問題を抱えているか? など
ウクライナは、このスケジュールで手続きを進めています。
- 2002年 NATO加盟への関心を公言
- 2008年 加盟行動計画を申請 (だが、親露派のヤヌコビッチ大統領により失速)
- 2008年 NATOの首脳会議で、ジョージアとウクライナの将来的な加盟を認めた
- 2014年 ウクライナ騒乱 (親露派のヤヌコビッチ大統領を弾劾)
- 2014年 クリミア危機(ウクライナ領のクリミア半島が露に奪われる)
- 2014年 ウクライナ東部紛争 (東部での露との対立激化)
- 2017年 NATO加盟を約束する憲法改正
- 2019年 ゼレンスキー大統領(新欧米派)の就任
- 2021年 NATOとの協力促進のための国家安全保障戦略を採択
2008年にはNATOから「将来的な加盟を認める」とありましたが、
2014年のウクライナ騒乱での政変をきっかけに、クリミア危機やウクライナ東部紛争でロシアとの対立が顕在化しました。
親欧米派のゼレンスキー大統領が2019年から就任し、2021年にNATOとの協力促進のための国家安全保障戦略を採択しました。
加盟拒否?ウクライナがNATO加盟できない理由
ウクライナは、これがネックとなってNATO加盟が認められずにいました。
- ロシアとの領土問題
- 民主主義の機能が不十分
では、ロシアはどのように考えているのでしょうか?
ロシアは「NATOの拡大を直接的な脅威とみなす」と言っています。
1999年にチェコ、ハンガリー、ポーランド、2004年には旧バルト3国(エストニア、ラトビア、リトアニア)などいわゆる旧東側諸国がロシアからの支配や圧力を逃れて相次ぎNATOに加盟してきました。
ロシアは、NATOの東方拡大を自国に対する脅威とみなしています。
ウクライナが加盟すればかつては旧ソ連を形成し、ロシア人も住む国から、長い国境を接して武器を向けられることになる、として強く反発しています。
NATOがウクライナを助けない理由
結論からいうと、ウクライナがNATOに加盟していないからです。
NATOは非加盟国に対して、軍事介入をしないというルールを定めています。(例外的に、カザフスタンに人道緊急支援はしました)
NATOにとって、ウクライナとロシアとの緊迫した関係は脅威です。
ぶっちゃけ、ウクライナが今NATOに入るのは負担です。
NATOがロシアに軍事行動を起こすと、第三次世界大戦にまで波及するリスクを懸念しています。
選択肢は二つある。ロシアと戦争して第三次世界大戦を起こすか、国際法を犯した国にその代償を払わせるかだ。
このように、軍事介入せずに大規模な経済・金融制裁によってロシアの侵攻を食い止めたい考えを改めて強調しています。(注2)
Take Action!
いかがでしたか?
この記事では、ウクライナのNATO加盟について解説しました。
ポイントはこちらです。
- NATO(北大西洋条約機構)とは対ロシア軍事同盟
- ウクライナは2002年から手続きを進めてきましたが、「NATO加盟に向け前進しているが、すぐに加盟することはない」とされています。
- その一番の理由は、ロシアとの領土問題です
- ロシアはNATOの拡大を脅威とし、ウクライナのNATO加盟に反対しています
- ロシアのウクライナ侵攻に対し、NATOは非加盟国への軍事協力は控えています
私たちは微力ですが、無力ではありません。
ウクライナ支援に関心のある方は、こちらの記事をご覧ください。
頑張るあなたを応援しています!
次の記事で会いましょう!
出展
(注1) The Conversation, What’s NATO, and why does Ukraine want to join?
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