- SDGs、分かったようで良くわからない。
- SDGsの成り立ちの歴史は?
- SDGsが目指す世界観とは?
の疑問にこたえます。
SDGs (持続的な開発目標)とは、2015年に国連サミットで採択された、2030年までに、持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。
この記事では、SDGs成り立ちまでの世界の流れ、そして目指す世界観を紹介します。
私も「SDGsについて分かったようで、腹落ちしない…」と悶々とし何冊も本を読む中で、「SDGs思考 2030年のその先へ 17の目標を超えて目指す世界」と出会い、とってもクリアなSDGs観に霧が晴れたような感じがしました。
リアルに一番分かりやすく、詳しく説明している本です。
本記事では、「SDGs思考」をもとに解説します。
結論から言うと、SDGsは、世界での「平和・開発・人権」の流れと「環境・持続可能性」の流れが統合した結果、定められました。
このような図になります。それぞれの流れの歴史をたどっていきましょう。
「平和・開発・人権」の流れ
1945年 国際連合の設立
国際連合は、第二次世界大戦の反省から、1945年に人類史上初めて「共存」を目的として設立されました。
国連憲章は、人類全体として共存を戦略にしようと誓った初の文書です。国連憲章前文には次のように決意が示されています。
「われら連合国の人民は、われらの一生のうち二度まで言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から将来の世代を救い、基本的人権と人間の尊厳及び価値と男女及び大小各国の同権とに関する信念を改めて確認し、正義と条約その他の国際法の源泉から生ずる義務の尊重とを維持することができる条件を確立し、一層大きな自由の中で社会的進歩と生活水準の向上とを促進すること、
並びに、このために、寛容を実行し、且つ、善良な隣人として互に平和に生活し、国際の平和および安全を維持するためにわれらの力を合わせ、共同の利益の場合を除く外は武力を用いないことを原則の受諾と方法の設定によって確保し、すべての人民の経済的及び社会的発達を促進するために国際機構を用いることを決意して、
これらの目的を達成するために、われらの努力を結集することに決定した。
[出典] 国際連合広報センター 国際連合憲章
戦争の惨禍を繰り返したくないと誓った人類は、二度と戦争をしないこと(平和)、飢餓から人々を救うこと(開発)、そして人々が生まれながらにして持つ可能性を摘まないこと(人権)という3つの重要な目標に注力することとしました。
1990~2000年代 世界の紛争期
1989年にアメリカと旧ソ連の冷戦が終わると、世界中で戦争が巻き起こります。
上の世界地図のように、ソマリア、シエラレオネ、ルワンダ、アフガニスタン、東ティモールなどの国々では、国家を崩壊させるほどの激しく長い紛争が続きました。
多くの人命が失われ、人々は人権を奪われたのですが、だからこそより一層、国連の人権を守り平和を実現するための役割が重要になったといえます。
2000年代 ミレニアム開発目標(MDGs)
MDGsでは2015年までに達成すべき次の8つの目標を掲げました。
MDGsの主な成果
- 極度の貧困(1日1.25米ドル未満で生活)で暮らす人の数は、19億人(1990年)から8億3,600万人(2015年)と、半数以下に減少
- 途上国の初等教育純就学率は80%(1990年)から91%(2015年)に増加
- 途上国の3分の2以上で、初等教育の就学率において男女の格差が解消
MDGsで残った課題
- 特に南アジアとサハラ以南アフリカでは、このような課題が残りました
- 極度の貧困にいる人々の約80%が暮らしている
- 低体重児の90%近くが暮らしている
- 妊産婦死亡率が高く、2013年における世界全体の数の86%を占める
- 地表水を使う人の90%が農村部で暮らしている
- インターネットの普及にも格差が生じており、先進国の82%に対し、途上国では人口の3分の1にとどまる。 (注2)
「環境・持続可能性」の流れ
1987年 「環境と開発に関する世界委員会」(ブルントラント委員会) 最終報告書
この報告書の中で、初めて「持続可能な開発 (Sustainable Development)」という言葉が使われます。その意図は、「将来の世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、今日の世代のニーズを満たすような開発」という意味です。
この辺りから、次の世代の人たちに資源を残していこうという機運が高まります。
1992年 国連環境開発会議(地球サミット)
オゾン層の破壊、地球温暖化、熱帯林の破壊など地球環境問題が深刻化し、世界的規模での早急な対応が求めれる中、1992年に、ブラジルのリオデジャネイロで地球サミットが開催されました。当時のほぼすべての加盟国である172カ国の政府代表、EC、国際機関、NGOなどが参加しました。
地球サミットでは、持続可能な開発に向け、地球規模のパートナーシップの構築を目指すリオ宣言が提唱されました。その具体的なルールはこちらです。
- 気候変動枠組条約:気候変動を抑制するための国際的な枠組み
- 生物多様性条約 :生物多様性の保全などを目的
- アジェンダ21 :各国政府の環境分野での行動計画
なお、気候変動枠組条約は、その後、1997年の京都議定書、2015年のパリ協定につながっていきます。
2012年 リオ+20
リオ+20の提案では、ポストMDGsの議論と統合され、持続的な開発に向けて「グリーン経済」や「制度的枠組み」などをテーマに議論がなされました。
2015年 SDGsの誕生
MDGsの期限終了を目前とした2015年9月に、国連総会で全会一致で「2030アジェンダ」が採択されました。
この文書の中に、17の目標、169のターゲットからなる持続可能な開発目標、すなわちSDGsが含まれています。
SDGsは、MDGsで残った課題を引き継いだだけでなく、経済成長、社会的包摂、環境保護といった諸課題を含んでおり、統合的な対策を必要とするものです。
また、MDGsが開発途上国のみに向けた対策であったのに対し、SDGsは普遍的であり、途上国・先進国を問わずすべての国を対象にしています。
SDGsの世界観
SDGsの17の目標は有名ですが、「理解していますか?」と問われると「SDGsはわかったようで、わからない」という方も多いのではないかと思います。
私もそうでした。
「SDGs思考 2030年のその先へ 17の目標を超えて目指す世界」を読んで、SDGsの目指す世界観の説明がとっても分かりやすかったので、ご紹介します。
結論からいうと、「世代を超えて、すべての人が、自分らしく、良く生きられる社会」と説明がなされています。
この理由は4つのキーワードで解説します。
キーワード1「すべての人が」
2030アジェンダの前文では、「誰ひとり取り残さない」(no one will left behind)という決意が宣言されています。
「すべての人」には2つの意味があり、①貧富の格差のない社会、②障がい者やLGBTQといった社会的少数者を含むすべての人が参画できる世界を目指しています。
キーワード2「自分らしく」
2030アジェンダの前文では、「より大きな自由」(in larger freedom)が平和の中で実現されるべきであると言い切っています。
ここで使われている「Freedom」は「人生における選択肢が多いこと」です。
2030年を生きるあらゆる人々のために、「自分の意志で未来を自由に選択できる世界」を目指す決意が表れているのです。そのような世界では、人々は「自分らしい」人生を送っているでしょう。
キーワード3「よく生きる」
2030アジェンダの宣言文では、「我々が思い描く世界は、すべての生命が栄え、すべての人々が身体的、精神的、社会的によく生きられる(well-being)世界である」と述べています。
ここで使われている「よく生きる(well-being)」という言葉は、WHOの健康の定義の中で、「たんに病気でない、ということではなく、身体的、精神的、社会的なwell-beingが満たされている状態であること」とされています。
SDGsの目指す世界で「よく生きる」ことを大切にしていることが分かります。
キーワード4「世代を超えて」
2030アジェンダの前文では、「今日の世代と将来の世代の両方のニーズを満たす」ことを宣言しています。
環境問題に今の世代で対処し、持続可能な社会を次の世代に引き継ぐ決意が表れています。
以上の4つのキーワードをつなげると、SDGsでは「世代を超えて、すべての人が、自分らしく、良く生きられる社会」と未来像が見えてきます。
この世界像から、17の目標を眺めるとより理解できますよね?
Take Action!
この記事の結論をまとめるとこのようになります。
- SDGsは世界での「平和・開発・人権」の流れと「環境・持続可能性」の流れが統合した結果、成り立ちました。
- SDGsが目指す世界観は、「世代を超えて、すべての人が、自分らしく、良く生きられる社会」です。
次のような方は、田瀬和夫さんの本「SDGs思考 2030年のその先へ 17の目標を超えて目指す世界」がおススメです!
- SDGsについてよく知りたい方
- 会社でSDGs対応の担当になったけど、何をすればよいか分からない方
- SDGsを経営に取り入れたいと考えている方
出典
(注1) 田瀬和夫氏「SDGs思考 2030年のその先へ 17の目標を超えて目指す世界」
(注2) ユニセフ ミレニアム開発目標(MDGs)
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