過去の話と思ってた。今も、奴隷って本当にいるの?
現代の奴隷の定義や規模は?どの国で多いの?
どんな暮らしをしてるの?
私たちの生活への関わりは?
私たちにできることは何?
この記事の筆者は、国際協力業界で10年以上、現役のNGOスタッフです。 残念ながら、世界には“現代の奴隷”と言われる人が、4030万人もいます。
この記事では、Walk Free Foundation (以下、WFF)の “2018 Modern Slavery Index”に基づき、現代の奴隷について網羅的に、分かりやすく解説します。5分ほどで読めます。
▽この記事で分かること
- 現代の奴隷の定義・規模・多い国
- 現代の奴隷の生活
- 私たちの生活への関わり
- 私たちにできること
現代の奴隷の定義・規模・多い国
定義
定義は国によって様々ですが、WFFレポートではこのような人々を「現代の奴隷」としています。
- 奴隷もしくは奴隷的な扱いを受けている人
- 人身売買される人 (強制労働や性的搾取の目的で)
- 強制労働させられている人
- 借金のカタに労働させられる人
- 強制的に結婚させられた人
- 売買や搾取される子どもたち
規模
現代の奴隷にあたる人は、4030万人いると推定されています。(2016年時点, 注1)
そのうち、71%が女性、29%が男性です。
2490万人が強制的に労働させられ、
1540万人が強制的に結婚させられています。
※Walk Free Foundation(以下WFF)の報告書『2018 Global Slavery Index』より
多い国
現代の奴隷って、どの国で特に多いのかな?
▽現代の奴隷の犠牲者数(推定値)が多い国 ワースト10
- 1位 インド (18,400,000人)
- 2位 中国 (3,390,000人)
- 3位 パキスタン (2,130,000人)
- 4位 バングラデシュ (1,530,000人)
- 5位 ウズベキスタン (1,240,000人)
- 6位 北朝鮮 (1,100,000人)
- 7位 ロシア連邦 (1,010,000人)
- 8位 ナイジェリア (875,500人)
- 9位 コンゴ民主共和国 (873,100人)
- 10位 インドネシア (736,100人)
次の地図では、人口あたりの奴隷数が多い国・少ない国をあらわしています。
多い国は濃い色、少ない国は薄い色です。
中国では、奴隷が339万人(推定)もいますが、それ以上に人口が多いので、1000人あたりの割合は低くなっています。
▽人口あたりの奴隷の多い国 ワースト10
- 1位 北朝鮮 (104.6人/1000人)
- 2位 エリトリア (93人/1000人)
- 3位 ブルンジ (40人/1000人)
- 4位 中央アメリカ共和国 (22.3人/1000人)
- 5位 アフガニスタン (22.2人/1000人)
- 6位 モーリタニア (21.4人/1000人)
- 7位 南スーダン (20.5人/1000人)
- 8位 パキスタン (16.8人/1000人)
- 9位 カンボジア (16.8人/1000人)
- 10位 イラン (16.2人/1000人)
紛争が起きていたり、政情不安だったり、独裁体制の国が目立ちます。
北朝鮮は10人に1人が搾取されてるって、ヤバいですね。
日本と同じアジアの国では、カンボジアもランクインしています。
日本でも、奴隷にあたる人は少ながらずいます。
犠牲者の絶対数では37,000人、人口1万人あたりだと3人です。
日常だと感じにくいですが、決して他人事ではないと思います。
現代の奴隷の生活
搾取されてしまっている人々はどのような生活をしているの?
私たちにも関わりのある、中国、タイ、日本での現代の奴隷を取り上げた動画を紹介します。
※だいぶ重い内容なので、閲覧注意です。
▽日本での外国人の労働者の搾取
▽中国の新疆ウイグル自治区での人権弾圧・強制労働
▽タイの水産業
対策
酷い…
このような問題を解決するための方法は?
現代の奴隷を解決するために、WFFは次の5つのマイルストーンが有効と提言しています。
- 奴隷制の生存者を特定し、奴隷から抜け出すため支援する
- 刑事司法メカニズムが、現代の奴隷を防ぐために効果的に機能している
- 国や地域レベルでの調整がなされ、政府はその対応を説明できる
- 現代の奴隷の原因である態度、社会システム、制度などのリスク要因に対処する
- 政府と企業は、強制労働で生産された商品やサービスの調達を停止する
これには、各国政府からの協力が欠かせません。
そのため、政府対応指数(government response index)として、181の政府が現代の奴隷制に対応するために取っている法的、政策、およびプログラム上の行動の比較評価を提供します。
これにより、各政府が5つのマイルストーンの達成に向けてどのように対応しているか分かります。
次の地図では、濃いグリーンの国がしっかり対応している国、オレンジが対応の悪い国です。
この中で、日本政府の格付は“CCC”です。
政府の規制が弱く、奴隷によって生産された商品・サービスであっても国内で流通している恐れがあります。
私たちの生活への関わり
強制労働で作られたリスクが高い輸入品トップ5
この問題は他人事ではありません。
日本を含むG20の国々は、消費を通じてこの問題に加担してしまうリスクがあります。
G20は強制労働で作られた商品を3540億ドルも輸入したと推測されています。
トップ5の商品はこちら。
- 1位 コンピュータ、携帯 (2001億ドル)
- 2位 衣類 (1277憶ドル)
- 3位 魚 (129憶ドル)
- 4位 カカオ (36憶ドル)
- 5位 さとうきび (21憶ドル)
日本は、アメリカに次ぐ2位の輸入大国です。(悪い意味で)
470億ドル(1$=110円換算で約5.17兆円)も、強制労働で作られた商品を輸入したと言われています。
そのほとんどがコンピュータ&携帯、衣類、そして魚でした。
日本は、WWFによる格付だとCCCで対応が遅れている国の一つです。
ドキッとしませんか?
私たちの身の回りにあるものですね。
気づかないうちに、この問題に加担してしまってるかも…?
政府が規制してくれないので、自分たちで考えて買う必要ありです。
日本で特に気をつけるべき商品
結論からいうと、安い中国製品です。
なぜ安いか?
企業努力もありますが、人を搾取して、安い賃金で働かせて作っていることも原因の一つです。
「2018 Global Slavery Index」では、気を付ける商品として、これがあげられています。
- パソコンや携帯などエレクトロニクス (中国製、マレーシア製)
- 衣類 (中国製、ベトナム製、タイ製)
- 魚 (中国産、タイ産、台湾産、韓国製など)
- チョコレート (ガーナ産、コートジボワール産)
- 材木 (ブラジル産、ペルー産)
Take Action!私たちにできること
いかがでしたか?
この記事では、こちらを解説しました。
- 現代の奴隷の定義・規模・多い国
- 現代の奴隷の生活
- 私たちの生活への関わり
この問題について、私たちができることを3つ紹介します。
学んで、考えて消費
日本では政府が規制してくれないので、私たちが普通に生活している中で、現代の奴隷の搾取に加担してしまうリスクがあります。
知って、行動する。これが一番の対策です。
これを買う時には、産地を気にして買いましょう。
- パソコンや携帯などエレクトロニクス
- 衣類
- 魚
- チョコレート
自分だけでなく、友達や家族に教えてあげるのも1つの方法です。また、アニメを観る時「これって現実社会だとどうなのだろう?」と考えてみるのも大事です。
寄付する
人身売買の被害者のうち25%が子どもです。
国際NGOのワールド・ビジョンは、人身取引や性的虐待・搾取から子どもたちを守るために、予防・啓発、被害にあった人たちの保護とケアを行っています。
詳しくはこちら>> 1日あたり150円で途上国の子どもたちの支援を
働く
強制労働などの人権問題を解決するために、国連、NGOなどで働くことも方法の一つです。
こちらの記事を参考に、キャリアを考えてみましょう。
私たち一人ひとりの力は微力ですが、集まれば大きな力になります。
頑張るあなたを応援しています!
次の記事で会いましょう!
出展
(注1) WALK FREE FOUNDATION, Global Slavery Index 2018
私たちにできること
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