今も世界でおこっている紛争は?
紛争による被害者や避難民などの被害の状況を知りたい。
紛争を体験したことないし、したくもないけど、紛争について知りたい。
国際協力の世界で10年、うち、紛争地などで人道援助を行う団体で4年間働いている筆者が解説します!
▽この記事を読むとこれが分かります。
- 紛争に関する統計データ
- 今、世界でおきている紛争・内戦の概要
- 紛争の理解に役立つ映画3本
空爆で脚を失うサッカー好きの少年…。「私たちが何をしたのよ!」と泣き叫ぶシリア人の少女…。
紛争のおぞましさを知り、紛争地で医療支援をしている団体を支えています。
日本人にとって、「世界の遠くで起きている紛争」をより「ジブンゴト」として考えられるように、と願いを込め、この記事をまとめました。
3分ほどで読めます。
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世界での紛争・内戦の状況とは
戦争・紛争・内戦とは
戦争とはどんなことですか?
紛争と戦争は違うのですか?
紛争と内戦とは違うのですか?
と聞かれたら、あなたは何と答えますか?
これについて、池上彰さんが「池上彰の君と考える戦争のない未来」の中で分かりやすく解説してくれているので、ここで引用します。
人と人の間で意見が違ったり、言われたりして、けんかになることがあります。
約束を破ったり、うそをついたり、きっかけはさまざまですが、いくらきっかけが小さなことでも元通りにするのはたいへんです。
それを話し合いではなく、暴力に訴えて、力の差で解決しようとする人がいます。
しかし、それで解決になるのでしょうか。
腕力でねじふせ、その場で終わらせることができたとしても双方が納得するわけではありません。
負けた方の怒りもおさまらず、でも腕力ではかなわない。もしそこにナイフや銃などの武器というものがあったら?
この状況を人ではなく、国に当てはめると戦争ということになります。…「戦争は暴力の一種」であることを覚えておいてください。(注1)
この記事では、このように定義して解説します。
- 戦争とは、一般的に国と国とが軍隊を使って戦うこと。
- 紛争とは、戦争ほど大規模なものにはなりませんが、限られた地域で軍隊どうしが衝突して小競り合いになること。
- 内戦とは、国内で戦いが起きること。
世界での紛争の統計情報
世界的な名著のFactfullnessによると、第1次・第2次の世界大戦以降、大幅に戦争や紛争の犠牲者は減っています。これは人類の努力の結果ともいえるでしょう。
しかし紛争がなくなったわけではありません、UCDP によると、2021年での紛争や内戦による犠牲者は12万1,000人でした。(注2)
こちらのグラフは、国家が関連した紛争での犠牲者の推移です。
ウクライナ/ロシア、アフリカ、中東、アメリカ、東南アジアで紛争がおきています。
2022年はウクライナ紛争やアフリカでの紛争激化もあり、死者数が約20万人となりました。
難民・国内避難民
今でも理不尽な理由で、亡くなる方、逃げざるを得ない方が後を絶ちません。
UNHCRによると、2020年末時点で、紛争や迫害により故郷を追われた人の数は8,240万人となりました。
近年では、増加の傾向にあります。
紛争や迫害、暴力などから逃れるため、着の身着のまま逃げてきた人。幼い子どもを連れて何千キロも歩いて避難した人。強制移動させられた人…。様々な背景から逃げざるを得ない方を想像すると胸がいたみます。
海外安全情報マップ
これを理解するに一番分かりやすいのが、外務省の海外安全情報です。
危険レベルが高まるごとに黄色→オレンジ→赤で表示されています。
紛争地や内戦が起きている国は、赤です。治安や政情が不安定なため、退避勧告がだされています。
こちらの地図を見ると、一目で分かりますね。
中東やアフリカに、政情が不安定で、内戦や紛争をしている国・地域が集中しています。
これらの国や地域での紛争の状況を、次の章で分かりやすく解説します。
主な紛争・内戦の概要
世界で起きている紛争のほんの一部ですが、シリア内戦、イエメン内戦、南スーダン内戦を解説します。
このテーマはとても奥深いので、あらためてアフリカの紛争についても別途記事を出したいと考えています。
イエメン内戦
2015年におこり、現在に至るまで続いている内戦です。
イエメンでは、全人口の約8割にあたる約2,400万人が何らかの人道支援を必要としているともいわれています。
特に、食料、医療、衛生状況は深刻で、約1,000万人が慢性的な食糧不足状態にあります。(注4)
このきっかけは、2011年の“アラブの春”の煽りを受けた反政府デモでした。国内混乱が生じ、33年間支配してきたサーレハ大統領(当時)が辞任し、ハーディ新大統領が政権移行プロセスに取り組んだのですが、反政府武装勢力の台頭もあり、泥沼の争いとなっています。
対立構造はとても複雑ですが、復権を狙うサーハレ大統領(イランが支援)vs現職のハーディ大統領(サウジアラビアなどスンニ派が支援)が中心的な対立構造です。
そこに、イスラム過激派組織AQAP、アンサリール・シャリーア、IS(イスラム国)vsアメリカを中心とする有志連合の戦いも並び立ちます。
内戦が複雑化・泥沼化し、終戦の見通しが立っていません。
シリア内戦
2011年の”アラブの春”をきっかけに始まり、10年以上続いている内戦です。
シリア危機は、戦闘行為が継続して情勢の安定化の見通しが見えない中、このような被害を発生させており、今世紀最悪の人道危機と言われる状況が続いています。(注6)
- 約57万人以上とも言われる死者(2019年国際NGO筋より)
- 数万人といわれる行方不明者(2021年国連)
- 約550万人以上の難民(2020年国連)
- 約610万人の国内避難民(2019年国連)
シリアでは、イスラム過激派組織「ISIL(イラクとレバンとのイスラム国)」の勢力が大きく後退する一方、シリア政府と反体制派の紛争は継続しています。
また、自国の安全保障上の懸念からトルコがシリア北西部に軍事介入を行っているほか、イランやヒズボラの勢力拡大を懸念するイスラエルがシリア国内に爆撃を行うなどしており、情勢は複雑化しています。
2017年以降、シリア政府と反体制派勢力が停戦について協議するアスタナ・プロセスが開始され、緊張緩和地帯の設置などの成果が見られました。今も関連国や国連が仲介するかたちでの調整が進められています。(注5)
南スーダン内戦
2011年に起こった南部独立の住民投票を皮切りに、南スーダン共和国が独立しました。世界で一番新しい国です。
南スーダンは独立後新体制を作り上げようとしましたが、与党であるスーダン民解放運動内で派閥抗争(キール大統領派対マシャール前副大統領派)が起こり、激化してしまいます。
この内戦も2018年6月には恒久的停戦を含むハルツーム宣言を採択することでとりあえずの終結を見せました。2020年2月には、暫定政府体制が成立し、国づくりが進められています。(注7)
しかし各地の暴動は後を絶たず、民家への略奪や放火、子どもへの略取、性的暴行なども続き、次のような問題が山積しています。(注8,9)
- 避難民は約430万人です
- 国外へ逃れた難民は約160万人にものぼります
- 難民のうち63%は子どもです
- 550万人が食糧支援を必要としています
人口は1,106万人(2019年)なので、人口の大部分が人道支援を必要としていることが分かります。
紛争を知るのにオススメな映画3本
ただ統計やペーパー上で知るだけでは、いまいち分からなくて「なんか大変そうだけど、遠い国の問題」と思っちゃう。
世界の紛争をジブンゴト化するために、映画がおすすめです。
最高なのは、その地を訪れ、環境や空気を体験し、その国出身の方の話を聞いたりすることです。が、紛争地には、そもそも行くのが難しいですよね。
映画を通じて、生生しい、壮絶なリアルを知ること。
そうして、紛争に向き合うことが、平和への一歩となるのではないでしょうか。
娘は戦場で生まれた
いまだ解決することのない、未曾有の内戦地シリアー
シリア人の監督が自身や周囲の人々の生活と、シリアの現状を記録したドキュメンタリー。
内戦下、医師の夫と結婚し、娘の「サマ」を授かります。
娘のため、パパは医師として、ママはジャーナリストとして戦います。
胸に迫る映画です。
ホテル・ルワンダ
1994年、アフリカのルワンダで内紛による大量虐殺の危機から人々を救った、実在のホテルマンの勇気と良心を描いた作品です。
大虐殺の中での国連軍の無力さ。
一方で、家族の愛と絆。
涙なしには見られない映画です。
火垂るの墓
日本も戦争を経験しました。
太平洋戦争末期、米軍のB-29による空襲が襲う神戸の街。
戦争孤児となった清太と妹の節子は叔母の家で肩身の狭い思いをし、2人だけで生きていこうとします。
その結果、誰も頼れなくなってしまい、兄妹は悲惨な運命をたどるのです。
兄妹に冷たく当たる親戚、大人の手を振り払う清太の姿など、極限化における人間社会のリアルを捉えています。
涙なしには観られません!
私達ができることは?
いかがでしたか?
この記事ではこちらを紹介しました。
- 紛争に関する統計データ
- 今、世界でおきている紛争・内戦の概要
- 紛争の理解に役立つ映画3本
読む中で辛く思うこともあったかもしれませんが、問題を見なかったことにせず、同じ人間として共感し、「自分がこの立場だったら…」と考えることが大事なのではと思います。
不条理な紛争。それへの対策として、人類が築いてきた知恵が“人道支援”ではないでしょうか。
こちらの記事では、人道支援についてまとめました。併せてご参照ください。
今日が人生で一番若い日です。今の行動が、将来の現実を変えます。
私は「国際協力で世界を良くする仲間を、1人でも増やす」という想いから記事を発信しています。
1人の力は小さくても、皆で集まると大きな力になると信じて。
頑張るあなたを応援しています!
次の記事で会いましょう!
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出展
(注1) 池上彰(2021年5月)「池上彰の君と考える戦争のない未来」株式会社理論社。
(注2) UCDP (Uppsala Conflict Data Program)
(注4) 外務省:イエメン共和国
(注6) 外務省:シリア
(注7) 外務省:南スーダン
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