- 国際協力に漠然と興味があるのだけど、どんな機関があるの?
- たくさんの機関があるけど、それぞれのポジションや役割は何なの?
- どんな仕事があるの?
という疑問にお答えします。
この記事を読むと、国際協力の主な4アクター(国際機関、政府系機関、国際協力NGO、民間企業)の役割、最近の傾向そして仕事について分かります。
国際協力の主な4つのアクターの役割
国際機関、政府系機関、国際協力機関NGO、民間企業のそれぞれの役割は、ざっくり言うとこのような図になります。
もちろん、全てがこの分類に当てはまるわけではありません。JICAは二国間援助として草の根の事業(案件の多くは少額支援)も行いますし、最近は特にビジネスを通じての国際協力に注力している傾向もあります。国際協力NGOでも、ビジネスとして現地のパートナーと対等な関係を築くようなところもあります。この図は、ざっくりとした役割分担のイメージとして参考にしてください。
国際機関
国際機関は、紛争、環境問題などの世界的な課題を解決するためにつくられた機関であり、多国間援助を行います。国際連合(以下、国連)の目的は「平和維持、国家間の友好、国際協力」であり、世界でのリーダー的な役割を果たしています。2015年の国連総会では193ヵ国の国連加盟国が全会一致で、SDGs(持続可能な開発目標)が定められました。SDGsは私たちが目指す姿を示した未来予想図とも言えるものになっています。
国連システムの概観
国際機関の記事
政府系機関
政府開発援助(ODA)
日本政府は国際貢献として、開発途上国の社会、経済の開発を支えるために、公的資金を使って「政府開発援助(ODA)」を行っています。ODAを通じて世界の安定と平和を促進することで、日本の国益につなげるためです。
日本のODAは世界トップクラスです。2018年にはアメリカ(1位)、ドイツ(2位)、英国(3位)についで世界4位で1兆5000億円の支出でした。
“ODAには、日本が開発途上国を直接支援する二国間援助と国際機関を通じて支援する多国間援助というものがあります。多国間援助は、日本が支援している国際機関を通じて行われています。
もう一方の二国間援助は、まず「贈与」と「政府貸付」に分けることができます。
「贈与」は途上国に対して無償で提供される協力のことで、「無償資金協力」と「技術協力」というものがあります。逆に「政府貸付」とは、将来、途上国が返済することを前提としたもので、「有償資金協力」がこれにあたり、「円借款」とも呼ばれているものです。
[出典] JICA ODAの種類や内容について
ODAは外務省、JICAを中心に行われており、詳しくは「【徹底図解】国際協力の政府系機関の9つの役割まとめ」でご紹介します。
貿易・投資・海外展開
ビジネスを通じた日本企業の貿易や投資を支援するための施策も行われています。
2019年の対世界での日本の輸出額は705,632百万ドルで世界第5位、輸入額は644,271百万ドルで世界第4位であり、世界経済をリードしている国の一つです。日本の良い商品の海外への輸出、海外の良い品の日本への輸入、日本企業の海外での工場建設や販路拡大進出などを支援することで、日本の国際競争力を維持・向上と、国際社会への貢献を目指しています。
このようなビジネスを通じた国際協力は、経済産業省とその所轄機関を中心に行われています。
政府系機関の概観
政府系機関の記事
国際協力NGO
国際協力NGO (Non-Governmental Organization, 非政府組織)は、国際機関や政府系機関より草の根に近いレベルで、困難を抱えている方々や環境に対してより直接的に活動を行っています。
医療保健、教育、食料、貧困、平和、人権、環境などの公共性の高い取り組みを行いますが、主な収入は、政府系機関のような税収入や拠出金等ではなく、一般の方からの寄付や事業収入などです(※)。NGO/NPOがお金を募る活動を”ファンドレイジング”といいます。また、団体の規模にもよりますが、一般的にNGOの活動規模は政府系機関が行う”国づくり”に比べると小さく、プロジェクト期間もより短期で見ているような団体が多いです。
また、民間企業とNGO/NPOの一番大きな違いは、受益者負担の考え方です。例えば、民間企業がおにぎりを販売する場合、その製造にかかる費用はおにぎりを食べる人に負担してもらうのが原則です。ではホームレスにおにぎりを提供する活動の場合はどうでしょう。おにぎりを食べる人、つまり受益者はホームレスですが、費用を払ってもらうのが難しい。そこで、誰かが支援者として費用を負担してもらうことで、活動を長く続けることができます。
世の中の活動には「利益を受ける人」と「費用を負担する人」が異なるケースがあります。このように「受益者負担の原則が成立しない事業」こそNGO/NPOが活躍するフィールドであるといえます。(注2)
国際協力NGOには、セーブ・ザ・チルドレン、国境なき医師団、ワールドビジョン、グラミン銀行などがあります。その多くが日本国内ではNPO (Non-Profit Organization, 特定非営利活動法人)の形態をとっています。NPOの法人数は51,117団体、うち認定NPOは1,162団体です。(2020年6月現在)(注3)
※政府からNGO/NPOへの補助金や助成金等もあり、特に設立当初の団体では収入のほとんどを補助金に頼っているような団体もあります。
国際協力NGOの記事
民間企業
開発コンサルティング企業
開発途上国の健全な社会・経済発展をサポートする日本のODA案件や現地政府などが発注するプロジェクトを現場で担うのが、高度な専門性と知見・経験を備えた開発コンサルタントと呼ばれる“開発協力のプロフェッショナル”たちです。
農村開発やインフラ整備、保健・医療、教育、行政人材育成、民間連携といった幅広い分野で活躍しています。
企業のCSR部門やCSV部門
企業の中で、従来のCSR (Corporate Social Responsibility: 企業の社会的責任)に加えて、CSV という考えが注目されています。
CSVは、Creating Social Valueの略語で、「共通価値の創造」などと訳されます。CSVは自社の強みを活かして、社会問題を解決する考え方です。企業の成長と社会的課題の解決を同じベクトル上に置くことで、企業の存在価値をアピールする差別化戦略の一つです。(注4)
日本企業は伝統的に「売り手よし、買い手よし、世間よし」の三方よしを重視する企業が多く、CSVとの親和性が高いと言われています。企業がCSVで社会的な問題解決を目指すことで、SDGsの目標達成にも貢献することができます。
ESG投資家
ESG投資は、従来の財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素も考慮した投資のことを指します。
特に、年金基金など大きな資産を超長期で運用する機関投資家を中心に、企業経営のサステナビリティを評価するという概念が普及し、気候変動などを念頭においた長期的なリスクマネジメントや、企業の新たな収益創出の機会を評価するベンチマークとして、SDGsと合わせて注目されています。
ソーシャルベンチャー
ソーシャルベンチャー(社会的起業)には、事業活動を成立させるための収益性を確保しつつ、同じ活動を通じて社会貢献が可能となるビジネスモデルの創案が求められます。 起業家には、高い志と、イノベーションを生み出す高い知識やスキルが必要とされます。 営利法人も非営利団体もソーシャルベンチャーです。
まとめ
国際協力に関わる4つのアクターとして、国際機関、政府系機関、国際協力NGO、民間企業をご紹介しました。
国際協力に関わる仕事に、スキルや知識に自信がなかったり、収入の面で不安を抱いている方もいるかもしれません。しかし、国際協力で一番大切なのは、世界での問題を解決したいという想いです。
きっとあなたが理想とする働き方は見つかります。頑張るあなたを応援します!次の記事でお会いしましょう!
国際機関
政府系機関
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国際協力NGO
出典
(注1) 国際連合システムを参照。
(注2) 日経BP社「初歩的な疑問から答える NPOの教科書」参照
(注4) CSV(Creating Shared Value)より