保健医療での途上国などの課題とは?
日本の国際医療協力の取り組みは?
病院での国際医療協力の取り組み事例を知りたい。
の疑問にこたえます。
世界では、人口の約半分が質の高い基礎的な保健医療サービスを利用できず、今なお多くの人々が予防可能な病気で命を落としています。
この記事の読者さんは、この問題を解決に関心をもっている方々と思います。
この記事では、世界の保健医療分野の課題、JICAの保健医療での方針、日本の医療法人や病院での国際医療協力の取り組み事例について解説します。
国際的な医療協力に関心がある方、必見です!
保健医療分野での諸外国の課題
ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)
UHCとは、「すべての人々が基礎的な保健医療サービスを、必要な時に、負担可能な費用で受けられる」ことを指します。
持続可能な開発目標(SDGs)のゴール3「すべての人々に健康と福祉を」の中にも、UHUの達成は掲げられています。(注6)
UHUのためには、次の2つが重要です。
- 保健医療サービスが身近に提供されていること
- 保健医療サービスの利用にあたって費用が障壁とならないこと
母子保健
衛生環境の悪さ、医療へのアクセスの悪さの影響を受けやすいのは、子どもや女性です。
妊娠・出産で命を落とす年間約30万人の妊産婦(注7)や、5歳未満で亡くなる年間530万人の子ども(注8)のうち、99%が開発途上国の人々です。
現地保健省、国連機関やNGOなどの継続的な努力により、子どもへのワクチン接種率は上昇する傾向にあります。
世界中の1歳児のうち、何らかの予防接種ワクチンを受けている子どもの割合は88%(2016年時点)です。
しかし裏を返すと、まだ12%もの子どもが基本的なワクチン接種などの基本的な医療を受けられていないのも事実です。
このように、弱い立場になりやすい、妊産婦や子どもたちが医療にアクセスしやすくすることは重要です。
疾病対策
世界では毎年、感染症で多くの方が死亡しており、次の疾患が特に深刻で2019年の死因別の死者数はこちらです。(注9)
- 結核 約120万人
- HIV/AIDS 約67万人
- マラリア 約41万人
- はしか 約16万人
- コレラ 約14万人
- 肝炎 約10万人
感染症の流行は社会経済に大きな被害をもたらします。
新興・再興感染症での流行は、なおさら深刻です。
特に、2020年からの新型コロナウイルス感染症の急激な拡大は、開発途上国だけでなく多くの先進国でも感染者・死亡者を多数出しています。
近年、日本だけでなく多くの国で高齢化が進み、それに伴って非感染症疾患(生活習慣病、がん等)が急増しています。
医療技術の進歩により多くの方が救われる一方、多額の医療機材の維持管理費などにより多くの国に財政負担の増大をもたらしています。
個人のレベルでも、毎年約1億人が医療費負担の結果、極度の貧困に陥っています。
医療の質
開発途上国で保健医療サービスが信頼され、安全、安心なケアが受けられるようにするためには、医療の質の改善が欠かせません。
医療事故を防止するための患者安全、院内感染対策など、医療の質には様々な側面があります。
保健人材の教育
一部の途上国では保健人材の育成においても、教育が遅れていて質の良い教育を受けらえないまま医師や看護師などになった方もいます。
極端な例ですが、最貧国の一つであるコンゴ民主共和国では現地国立大学は窓も割れてボロボロの状態、教科書は10~20年前のものを使いまわして教育がなされているそうです。
そのような環境では、先進国では当たり前のエビデンスベースの医療も決して当たり前ではありません。
日本の保健医療協力の取り組み
JICAの取り組み
日本のODAの窓口を担っているJICA(国際協力機関)では、開発途上国のUHC達成を支援するために、「すべての人々に健康を」という目標を共有し、次の取り組みを行っています。
- 質の高い保健医療サービスを提供するための体制強化
- 医療費負担を軽減するための医療保障制度の整備
- 公衆衛生危機対応能力の強化
- 上記1~3を支える保健ガバナンスの強化
また、「グローバルな学び合いの促進」として、さまざまなアクター間での学び合い促進に取り組んでいます。
この学び合いとして、日本の病院の施設・運営などの知見や経験をシェアすることは重要であり、従来から取り組まれてきました。
経済産業省の取り組み
日本の優れた製品やノウハウを輸出するため、経済産業省では国際展開事業を行っています。
病院や医療法人での取り組み事例
国立国際医療研究センター病院
医療分野での国際協力といえば、この病院!
JICAやWHOなどと協力して様々な事業を行っています。
世界で活躍する局員たち [出展] 国立国際医療研究センター病院 Global Project Map
▽活動内容
- 医療技術等国際展開推進事業。日本の経験や知見を活かして、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成に向けて医療分野での協力を行っています。詳しくは上記のGlobal Project Mapをご覧ください。
- 国際保健に関する研修事業
- イベント・セミナーの開催
- ラジオ番組「グローバルヘルスカフェ」での発信
- 国際保健医療の分野での企業・団体の海外展開支援
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徳洲会グループ
協力・交流国一覧 [出展]徳洲会グループ
ビジョン:「いつでも、どこでも、誰でもが、最善の医療を受けられる社会」の現実を目指して。
日本だけでなく、世界中の社会的弱者のために、医療・福祉を提供することを目標として掲げています。
▽活動内容
- 人工透析器の寄贈(22カ国に合計327台の寄贈実績、2017年時点)
- 医療用ベッド、小児用呼吸器などの寄贈
- 透析センターの開設支援
- TMAT災害医療活動 など
社会医療法人大雄会
「人類を救う」という使命のもと、ミャンマーへの医療支援を継続的に行っています。
▽活動内容
- 医療機器の寄贈・メンテナンス
- ミャンマーの医療スタッフ向けの研修
- 研修生の受け入れ
Take Action!
いかがでしたか?
この記事では、世界の保健医療分野の課題、JICAの保健医療での方針、日本の医療法人や病院での国際医療協力の取り組み事例について解説しました。
私は「国際協力で世界を良くする仲間を、1人でも増やす」という想いから記事を発信しています。
1人の力は小さくても、皆で集まると大きな力になると信じて。
頑張るあなたを応援しています!
次の記事で会いましょう!
出展
(注1) JICA:保健医療
(注2) 国立国際医療研究センター病院
(注3) 社会医療法人大雄会
(注4) 徳洲会グループ:国際医療協力
(注5) 国立保健医療科学院
(注6) ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ
(注7) 「妊産婦死亡の動向2000-2017」 国連機関が発表
(注8) ユニセフ_ 世界の5歳未満児死亡数、年間530万人に減少
(注9) statista_ Annual deaths number from communicable diseases 2019
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