国際協力業界では、どのようなアクターが活躍しているか?
どのような関わり方があるのか?
アクターや関わり方が多すぎて選択に困る…自分に合った関わり方をどう選択しよう?
の疑問にこたえます。
この記事の信頼性
この記事では、国際協力業界の主なアクター6つ、そしてあなたに最適な関わり方を見つけるための問いかけ6つを解説します。
国際協力の主なアクター6つと働き方
国際協力とは、「政府間、多国間、あるいは民間で行われる、国境を超えた援助・協力活動」です。(注1)
多国間、二国間、草の根といった様々なレベル感での活動が行われており、関わり方も多様です。国際協力に取り組む6つのアクターとそこでの関わり方を紹介します。
国連機関
国連は「平和維持、国家間の友好、国際協力」を目的として、SDGs(持続可能な開発目標)や国際的な条約等の制定だけでなく、国際協力として、開発途上国やその国民を直接的に支援する活動を行っています。
国連システムから形成され、加盟国との多国間の調整を行っています。
国連職員は、国連システムに所属し、紛争の終結、貧困の緩和、気候変動対策、人権の擁護などの世界でのさまざまな問題解決に取り組みます。
事務局での勤務よりも、実際に問題が起こっている世界各地に赴任し、現地にてその問題解決に取り組む職員が多いのが特徴です。
一般的に国連職員と言われるポジションは5つあります(特別なポジションを除く)。いわゆる国際公務員や国際職員です。
- 専門職…国際的な公募による採用で、さまざまな国で働くことが求められます。通称:Pスタッフ(Professional)
- 管理職…専門職が管理職レベルとして、さまざまな国で働くことが求められます。通称:Dスタッフ(Director)
- 一般職…その国の現地で働くスタッフとして、特定の地域で働き続けることが求められます。総務や秘書などの補助的な仕事や、警備などを担います。一般職から専門職への転職は難しいため注意が必要です。通称:GSスタッフ(General Service)
- フィールドスタッフ…通称:FSポスト(Field Staff)
- 国家職員…国際職員と一般職員のハイブリッド型で、求められるレベルは専門職と同等のレベルですが、一つの勤務地で働く職員です。給料、福利厚生も一般職よりも優れていますが、勤務地によってはその数が圧倒的に少ないことがあります。通称:NOスタッフ(National Professional Officer)
例えば、専門職の場合は、次のような要件を満たす必要があります。
- 修士号以上の学歴
- 職歴は、関連した職務経験での2年以上の経験 (JPOの場合)
- コミュニケーション能力(英語orフランス語が流暢であることは必須)
- 経験に基づく専門性
国連職員に興味のある方は、この記事も併せてご覧ください。
政府機関
日本政府は国際貢献として、開発途上国の社会、経済の開発を支えるために、税金を使って「政府開発援助 (ODA)」を行っています。
ODAを通じて世界の安定と平和を促進することで、日本の国益につなげるためです。
国際協力機構 (JICA)が日本のODAを一元的に担っています。
JICAでは、「信頼で世界をつなぐ」のビジョンのもと、「二国間援助」を通じて開発途上国への国づくりに取り組みます。
公的機関として、短期的な利益に左右されず、真に求められる国の基盤づくりに取り組めることも魅力です。
途上国の抱える課題は、保健医療、教育、都市開発、インフラ、農業、環境、など多岐にわたります。
JICAは世界各国に約90の拠点をもち、150を超える国と地域への協力を行っています。
JICAの業務内容は多岐にわたります
- 空港や鉄道、橋梁等の大規模なインフラ整備のための投融資(円借款)
- 学校・病院・給水設備など基礎インフラ整備等のための無償資金協力
- 災害発生時の国際緊急援助
- JICA協力隊等の派遣 など
職種ごとに、仕事内容や求められる要件が異なります。
JICAでの仕事に関心のある方は、この記事も併せてご覧ください。
NGO
NGOとは、Non Governmental Organization (非政府組織)であり、市民の立場で支援を行う団体です。
NGOは「草の根レベル」での「顔の見える援助」を行っています。
NGOは政治やビジネスではカバーできない問題をカバーするために活動しています。
二国間援助、多国間援助では、政府間の取り決めが必要で、すぐに行動を移すことは難しいです。
一方、NGOでは、必要な時に、必要な支援を、草の根レベルで素早く届けることが出来ます。
ビジネスでは、お客さんにサービス/商品を提供して対価を得るスキームが主流です。
一方、NGOでは、お金の支払い能力のない貧しい人に提供し、その支援に係る資金は、寄付として募るというスキームが可能です。
「受益者負担の原則が成立しない事業」こそ、NGO/NPOが活躍するフィールドといえます。
NGOへの関わり方はこのような方法があります。小さい団体ほど、兼務する傾向にあります。
- フィールドスタッフ
- ファンドレイザー (資金を集める)
- 広報職 (活動を広める)
- アドボカシー職 (政府に働きかける)
- オペレーションサポート (支援活動を改善する)
- 総務
- 財務・会計
具体的な活動は団体によって様々です。
▽日本の国際協力NGOのランキング
▽NPO/NGOの採用情報
企業
企業としては、このような多岐にわたる関わり方があります。
- 開発コンサル企業として、JICAのODA案件を受注
- ソーシャルビジネスで、社会課題の解決のための事業を実施
- CSR (企業の社会的責任)の一環で、国際協力
- SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けて協力
- 法人として寄付
▽開発コンサル企業のトレンドとランキング
▽中小企業がSDGsを取り入れるマーケティング上のメリット
▽ソーシャルビジネスとは
個人
個人としても、草の根レベルでさまざまな取り組みを行っています。
- 個人として、途上国に学校や病院の建設などフリーランス国際協力師
- 専門家としてJICA案件を受注
- 寄付
- ボランティア
▽JICA専門家
大学・大学院
大学で国際協力や経済開発を研究し、論文発表などを通じてアカデミックな面で貢献する方法もあります。
グラミン銀行で有名なムハマド・ユヌス氏も、元々は大学教授です。
例えば次のような関わり方があります。
- 大学・大学院で研究する
- 大学・大学院での教師になる
- 大学発のベンチャー企業やNGOを設立する
最適な関わり方を見つけるための質問6つ
多国間支援、二国間支援、草の根といった様々なレベルで、多様な関わり方をご紹介しました。
しかし、「いっぱい選択肢がありすぎて分からないよ…」と思っている方もいるのではないでしょうか。
この章では、あなたにとって最適な関わり方を見つけるための、問いかけ5つをご紹介します。
あなたはどのような対象を助けたいですか?
あなたは、どのような人の抱える課題を解決するために働きたいですか?
例えば、貧しい人、飢餓の人、医療やきれいな水へのアクセスのない人でしょうか。
保護犬、絶滅危惧種といった動物かもしれません。
あなたはどのような対象を助けたいですか?
次の図をご覧ください。
もし受益者=お金を出す人とできるなら、ビジネスでのアプローチがおススメです。
もし受益者≠お金を出す人となるなら、NGO、政府系機関、国連機関からのアプローチがおススメです。
多国間、二国間、草の根、どのレベル感で働きたいですか?
働きたいレベル感によっても、働く先が異なります。
大学院に行って専門性をつけて働きたいですか?
大学院に行くかの選択は、人それぞれと思いますが、国際協力の世界では専門性が求められる仕事も多く、大学院で学んでいた方がキャリア形成的には有利です。
専門性は、多くの場合、大学や大学院での専攻や資格を指します。
大学院を出ていないと就けない仕事は、国連職員、一部の大手の開発コンサル企業です。
大卒であってもNGO、JICA、民間企業などで働くことは可能です。
どのように関わりたいですか?それは、どの程度ですか?
関わり方には、次のような程度感があります。
- フルタイムで働く
- パートタイムで働く
- ボランティア・プロボノになる
- 労力は出さないけど、お金を出す人になる(寄付者、出資者、投資家など)
国際協力でフルタイムの仕事をするだけでなく、
民間企業でサラリーマンをしつつ、土日にはプロボノとしてNGOに関わることも方法です。
あなたはどのように関わりたいですか?それは、どの程度の関わりですか?
現地に行って自分で支援を行いたいですか?そのサポートをしたいですか?
自ら支援の現場に行って、受益者の方への支援を行いたい場合には、次の仕事が魅力的な選択肢になるでしょう。
- JICA協力隊
- 開発コンサルタント
- NGOのフィールドスタッフ
- 国連職員
一方で、「自分で直接支援しなくても、困っている人を支えたい」といった人もいることと思います。
そのような方は、次のような選択肢が考えられます。
- プロジェクトマネジメントを行うJICA職員
- NGOの国内支援の職(ファンドレイザー、広報、総務、会計)
- クラウドファンディング会社などの間接支援企業
- 開発コンサル企業のオペレーションサポート職 など
ESBIのどのクワドラントで働きたいですか?
ビジネスマンの必読書「金持ち父さん、貧乏父さん」という本で紹介されている、4つの働き方のクワドラントについてまず紹介します。
この4つのクワドラントによって、価値観、働き方が全く異なります。
- E:Employee(労働者)
- S:Self employee(自営業者)
- B:Business owner(ビジネスオーナー)
- I:Investor(投資家)
図にすると、このようになります。
働き方の収入源、意思決定はこのようになります。
例えば、国際協力の仕事をESBIに分類すると、次の図のような分類になります。
民間企業でキャリアを積み(E)、キャリアの最後に社会貢献したいと考えてNGOに転職(E)する方もいます。Eクワドランとの中で働き続けるのも、一つの選択です。
また、外務省の職員(E)→国連職員(E)→日系企業の役員(E)→起業し会社経営者(B)となった方もいます。EからBへクワドラントを超えて、キャリアをつくるのも方法です。
あなたはどんなクワドラントで働きたいですか?
私は、大卒で二国間支援のODAの開発コンサル企業に新卒で飛び込み、より草の根の関わりをしたいと考えてNGOに転職しました。
フィールドにも行きたいですが、それよりはサポートしたい志向です。
クワドラントはEだけでなく、Sでもやっていきたいので、ブログを書いています。
まだまだ道の途中です!一緒に頑張りましょう!
Take Action!
いかがでしたか?
この記事では、国際協力に関わるアクター6つについて、概要、関わり方、そして選択するための6つの問いかけを解説しました。
- あなたはどのような対象を助けたいですか?
- 多国間、二国間、草の根、どのレベル感で働きたいですか?
- 大学院に行って専門性をつけて働きたいですか?
- どのように関わりたいですか?それは、どの程度ですか?
- 現地に行って自分で支援を行いたいですか?そのサポートをしたいですか?
- ESBIのどのクワドラントで働きたいですか?
この問いかけと向き合うことで、きっとあなたはご自身に最適な関わり方を見つけることでしょう。
頑張るあなたを応援しています!次の記事で会いましょう!
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