国際協力の仕事に興味があるけど、日本政府ではどのような機関がその役割を担っているの?
いろんな機関があるけど、どんな役割で、どう連携しているの?
そんなお悩みにお応えします!
私は開発コンサルとして6年間、政府系機関をお客さんとして働きました。
多くのネット記事では、政府系機関について断片的な情報や行政の堅苦しい記事が多いですが、この記事では分かりやすく体系的に情報をまとめています。
この記事を読むと、
・日本の国際協力を担う、主な政府系機関9つのポジションと役割が分かります
・図解で、政府系機関どうしの繋がり、政府系機関と民間のつながりが分かります
政府系機関のまとめ
国際協力には多くの省庁が関わっていますが、ここでは政策の大方針をしめす内閣、ODAを主導する外務省、財務政策をおこなう財務省、日本企業の貿易・投資促進を目指す経済産業省を中心に、その所轄機関の役割をまとめました。
ここではざっくりと意思決定の流れのイメージをもってください。
次から各機関の詳細を説明します。
内閣
日本の行政権を担当する最高機関としてリーダーシップを発揮しています。2015年2月には、「開発協力大綱」を閣議決定し、日本のODA政策の方針を示しました。
2016年には、総理大臣を本部長、官房長官、外務大臣を副本部長とし、全閣僚を構成員とする「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」が設置されました。日本の取組の指針となる「SDGs実施指針」を決定しました。
内閣府
内閣総理大臣の仕事を支え、国の重要な政策について企画、実施します。経済財政、科学技術・イノベーション、共生社会、男女共同参画、防災、沖縄・北方領土、子ども・子育て支援、地方創生など様々な政策を扱います。
国際平和協力本部事務局は、国連平和維持活動(国連PKO)への協力を行っています。
外務省
日本の外交(国際社会で国や国民の利益を守る)を担う省として、このような活動を行っています。
- ・日本と国際社会の平和と安定の確保に向けた政府間交渉や国際機関を通じた活動
- ・開発途上国への開発協力(ODAの方針立案・予算管理)
- ・国際社会における日本経済の成長と繁栄の追求
- ・日本文化紹介などを通じた対日理解の促進
- ・パスポートの発給や海外での日本人保護などの領事業務など
財務省
財政投融資(財務省による出資・融資)で民間ではできない分野での資金ニーズにこたえること、そして日本と世界の金融秩序の安定を図ることなどを目的に、このような活動を行っています。
- ・ODAの一部予算を管理し、JICA出資金や有償資金協力の事業規模などを予算管理しています。
- ・世界銀行やアジア開発銀行などの国際開発金融機関への出資により、開発途上国の支援を行っています。
- ・金融・世界経済に関する首脳会合(G20サミット)やIMF関連の国際会議への参加を通して、国際的な金融システムの安定化に貢献しています。
経済産業省
日本を豊かにするために、経済の構造をより良いものに変革したり、外国との貿易(商品取引)を盛んにしたり、資源やエネルギーを確保したりする省です。国際協力では、このような活動を行っています。
- ・貿易や投資を盛んにするための国際的なルールづくり
- ・日本企業の海外進出・投資の促進
- ・温暖化対策のため、国際会議での各国の合意形成に向けた提案や交渉
独立行政法人国際協力機構(JICA)
外務省所轄のODA実施機関です。「信頼で世界をつなぐ」というビジョンのもと、人間の安全保障の一層の推進、「質の高い成長」の促進、さまざまな主体との連携の強化など、開発協力大綱(2015年2月に閣議決定)などに基づく具体的な事業を展開していきます。世界90カ所以上に拠点を持ち、150以上の国や地域を協力対象にしています。主な業務内容は、こちらです。(注1)
・開発途上国への技術協力
・有償資金協力(円借款、海外投融資)
・無償資金協力
・国民などの協力活動の促進
・海外移住者・日系人への支援
・技術協力のための人材の養成及び確保
・調査および研究
・緊急援助のための機材・物資の備蓄・供与
・国際緊急援助隊の派遣
[出典] JICA公式ホームページより
このように、JICAの業務は多岐にわたりますので、開発コンサルティング企業、商社、ゼネコン、メーカーの民間企業や大学などの研究機関と協力しながら活動を行っています。
▼ JICAの組織図 (2020年4月1日現在)
JICAの組織は、機能別や地域別に細かく分かれていることが分かります。このそれぞれで、民間企業や大学、NGOなどと連携しながら、ODA事業をおこなっていることから、いかに活動の範囲が広いかが分かります。
株式会社国際協力銀行(JBIC)
JBICは財務省所轄の政策金融機関です。「日本の力を、世界のために。」というコーポレートスローガンのもと、次のミッションのために活動しています。
- ・日本にとって重要な資源の海外における開発および取得の促進
- ・日本の産業の国際競争力の維持および向上
- ・地球温暖化の防止等の地球環境の保全を目的とする海外における事業の促進
- ・国際金融秩序の混乱の防止またはその被害への対処
具体的には、海外での資源開発や産業の維持や向上、インフラ開発、地球温暖化のための環境保全活動などが挙げられます。(注2)
株式会社日本貿易保険(NEXI)
開発途上国との輸出入やインフラ整備などの投資・融資では、通常の貿易以上のリスクが伴います。NEXIは、このような場合に、民間の損害保険会社が通常提供する海上保険などで対応ができない取引上のリスクをカバーする貿易保険の提供を主な業務にしています。NEXIは経済産業省所轄の政策金融機関です。
独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)
JETROは経済産業省の所轄で、日本経済の発展のために貿易・投資を拡大する事業や開発途上国に関する研究を幅広く実施しています。
70カ所を超える海外事務所ならびに本部(東京)、大阪本部、アジア経済研究所および国内事務所をあわせ約50の国内拠点から成る国内外ネットワークをフルに活用できることが強みです。対日投資の促進、農林水産物・食品の輸出や中堅・中小企業等の海外展開支援に機動的かつ効率的に取り組むとともに、調査や研究を通じ我が国企業活動や通商政策に貢献しています。(注3)
政府系機関のまとめ
政府系の各機関の機能や役割は分かりましたか?
専門的な各組織が連携して、ODAや国際的な経済協力を行っています。この機能や連携は、日本の国際協力を理解するうえで、とても重要です。すぐには分かりにくいと思いますが、何度か読み直して理解していきましょう。
【出典】
(注1) JICA組織概要
(注2) 国際協力銀行の役割と機能
(注3) JETRO公式ホームページ
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