宇宙技術で解決が期待される、世界の社会課題とは?
宇宙関連市場の規模やこれからの見通しは?
日本の国際協力の方針や取り組みは?
ちょっと難しそう…。取り組みを分かりやすく知りたい。
の疑問にこたえます。
「宇宙技術×国際協力」と聞くと、意外⁉と思う方もいると思います。(筆者もそうでした笑)
しかし、「宇宙技術」は地球規模の環境問題の解決にとても役立つと期待されている技術です。
日本政府、JICA、JAXAも、宇宙技術での国際協力に力を入れていく方針です。これから更に伸びる分野と考えられます。
知れば知るほど、面白い!可能性に気づかされます!
この記事では、宇宙技術で解決が期待される世界の課題、市場規模、日本の宇宙開発での国際協力の方針、取り組みを分かりやすく解説します。
宇宙技術で解決が期待される世界の課題
地球と宇宙の環境問題
地球の環境問題はより深刻になっており、地球上でもこのような問題が生じています。
- 地震や津波などの自然災害
- 森林の減少
地球上の資源が限界を迎える恐れから、火星などの他の星への旅行や移住計画も検討されているほどです。(これはまだ基礎調査と仮説検証の段階ですが。)
まずは地球環境を守って次の世代へ引き継ぐ、という考え方から、SDGs(持続可能な開発目標)という共通のゴールもと、国連、政府、NGO/NPO、民間企業、個人といった様々なレベルでの取り組みが行われています。
また、宇宙空間でも、ロケットや壊れた衛生の破片などの宇宙ごみは、「スペースデブリ」と呼ばれ、10cm以上のものだと約2万個 (2010年現在)もあると言われています。
衛生などをせっかく打ち上げても、スペースデブリにぶつかると壊れてしまうといった問題も発生しています。
インターネットアクセスの格差
世界でのデジタル格差は深刻です。
日本などの先進国で5G, 6Gといった新しい通信規格の普及により、通信速度や容量が劇的に上がっています。
その一方で、世界では約35憶人がインターネットへのアクセスがないと言われています。(2020年5月現在)
アフリカなどの途上国においても、ITで可能性を急速に広げており、ケニアでモバイルマネーが普及したり、ルワンダでドローンでの遠隔地への輸送事業が行われるなど、一足飛びにデジタル化が進んでいます。
世界でのインターネット普及率が高まれば、極度の貧困にある人々が3分の1に減るとまで言われており、世界銀行やJICAなどの国際機関でもITは注力する分野の一つです。
環境問題やインターネットアクセスの問題の一助になるのが、衛生などの宇宙技術です。
衛生の「観測」や「通信」を生かして、このような課題の解決につなげることも可能です。
世界的にも衛生をはじめとした宇宙技術の市場は飛躍的に伸びています。次の章で具体的に見ていきましょう。
宇宙関連市場
市場規模
近年、先進国だけでなく新興国も宇宙技術の利用を進めていて、世界全体の宇宙関連市場は右肩上がりで伸びています。
宇宙関連市場は、2018年時点で、約40兆円の市場が存在しています。
このうち、約75%が衛生関連市場で、衛生放送、通信設備などが多くの割合を占めています。
2040年の宇宙業界の市場規模予測では、この市場が160兆円規模に伸びると言われています。
これからは、5Gという新しい通信規格に対応するため、衛生配備計画はさらに加速しています。
世界のインターネット“非”接続者比率
次の図からわかるように、アジア、中東、アフリカ、南米の多くの開発途上国ではインターネットにアクセスできる割合が低い傾向にあります。
逆にいうと、それだけ通信需要が高く、IT市場での成長ポテンシャルが高いということです。
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2040年までに宇宙関連市場が、4倍の160兆円になるって、すごい成長率ですよね!
想像してください。
この恩恵が開発途上国にも行き届いたら、どんな社会になっているのでしょうか?
日本の方針と取り組み
日本政府:宇宙基本計画
日本政府としても、宇宙技術を活用した国際協力を含めて、宇宙政策を強化する方針です。
2016年に閣議決定した宇宙基本計画を、2020年6月改訂しました。
改定後の宇宙基本計画では、宇宙分野でのさらなる民間企業活動の振興やSDGsへの貢献等も記載していて、「自立した宇宙利用大国を目指していく」など宇宙政策の強化を明言しています。
具体的には「災害対策・国土強靱化や地球規模課題の解決への貢献」として、日本が持つ「測位、通信・放送、観測等」の高度な宇宙システムを強化することで、次の取り組むことを定めています。
(a) 地震・津波・火山噴火・台風・竜巻・集中豪雨等の大規模災害及び大事故への対応並びに老朽化するインフラの維持管理等に役立てることにより、災害 対策・国土強靱化を推進する。
(b) 国際社会との協力の下、我が国がリーダーシップを発揮し、深刻化する世界のエネルギー、気候変動、環境、食糧、公衆衛生、大規模自然災害等の地 球規模課題の解決に貢献し、SDGs の達成につなげる。
[出展] 宇宙基本計画(2020年6月改訂)
詳しくはこちら>>宇宙基本計画
宇宙関連の取り組みは多岐にわたりますが、「国際協力をしごとに。」では、途上国への取り組みに関心をもつ読者さんが多くいますので、この記事では、日本政府の途上国への取り組みを中心に解説します。
日本はこのような取り組みが歴史的に行ってきました。
- 国際社会への貢献(宇宙科学、気候変動、地球観測、世界遺産監視等)
- アジア太平洋地域等への貢献(災害監視、人事交流等)
- 途上国支援(ODAなどの適切な活用)
- 先端分野における国際協力 (注1)
JAXAの取り組み
JAXAの国際協力
JAXA(宇宙航空研究開発機構)は、国際貢献と日本の経済社会・国民の利益の両方を考慮しながら、日本の国際的地位にふさわしい国際協力を推進しています。
アジア・太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF)や国際航空研究フォーラム(IFAR)などでは主導的な役割を果たし、宇宙開発利用および航空研究の促進と人材育成、日本企業の海外展開などに貢献しています。
さらに、国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)などにおける情報交換、技術や法律問題の検討等を通じ外交・安全保障の面においても、宇宙の専門家の立場から積極的に貢献しています。(注5)
災害対応―センチネンタル・アジア
アジア太平洋地域の自然災害の監視のために「センチネル・アジア」という国際協力プロジェクトを行っています。
JAXAはこのプロジェクトでリーダーとしての役割を果たしています。
自然災害が発生した際には、緊急観測を行い、被害状況を把握するために観測し、被災国にデータを提供しています。
2006年以来、200回以上地球観測衛星による緊急観測を行いました。
JICAとJAXAとの連携
JICAはJAXAと協力して、宇宙分野ではこのような事業方針で取り組みを行っています。
- 宇宙分野の人材育成
- 日本の宇宙技術を活用した開発途上国への貢献
- 宇宙分野のインフラ整備
具体的に見ていきましょう。
宇宙分野の人材育成(JJ-NeST)
JAXAとJICAの共同で、留学生受け入れプログラムである「JJ-NeST」(JICA-JAXA Network for Utilization of Space Technology)が立ち上げられました。
宇宙分野の核となる人材育成を進めるため、2021年から日本の大学への留学生の受け入れを行っています。
JICA・JAXA、東南アジア諸国の宇宙機関・大学・民間企業との持続的な人的・組織的なネットワークを構築、プラットフォーム化し、このネットワークを通じたSDGs達成への貢献を目指しています。
2021年からの5年間で20名の日本の大学への留学生、200名短期研修員の受け入れなどを予定しています。(注3, 4)
日本の宇宙技術を活用した開発途上国への貢献(JJ-FAST)
JJ-FAST(JICA-JAXA Forest Early Warning System in the Tropics:JICA-JAXA熱帯林早期警戒システム)です。
2016年11月に運用を開始して以来、3年間で約45,000件の森林減少を検知しました。
中南米、アフリカ各国でも利用が拡大しています。(注4)
Take Action!
いかがでしたか?
この記事では、宇宙技術で解決が期待される世界の課題、市場規模、日本の宇宙開発での国際協力の方針、取り組みを解説しました。
私は「国際協力で世界を良くする仲間を、1人でも増やす」という想いから記事を発信しています。
1人の力は小さくても、皆で集まると大きな力になると信じて。
頑張るあなたを応援しています!
次の記事で会いましょう!
出展
(注1) 宇宙開発戦略本部事務局:宇宙外交・国際協力について(平成21年3月6日)
(注2) 文科省:宇宙利用の世界市場動向 及び将来の予測 (2021年1月18日)
(注3) JAXA:第26回 アジア・太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF-26)」の開催結果について
(注4) JICA:越川副理事長が第26回APRSAF(アジア・太平洋地域宇宙機関会議)「持続可能な社会の構築に向けた革新的パートナーシップ」セッションに登壇
(注5) JAXA:国際協力・貢献
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