- WHOとは?
- WHOの活動内容とは?
- WHOの健康の定義とは?分かりやすく知りたい。
という疑問にこたえます。
「下医は病を治し、中医は人を治し、上医は国を治す」という格言があります。
病気そのものを治すような医者、病気を抱えているその人を診る医者がいるように、WHOの仕事は人々が生活している国を治すことです。
この記事では、WHO(世界保健機関)の役割・活動内容、憲章、組織、収支についてわかりやすく解説します。
数字で見るWHOの概要 (2020年10月現在)
- 加盟国:194カ国
- 事務所:150以上のカントリーオフィス, 6つの地域オフィス, 1つの事務局
- 職員数:7,000人以上
- 設立年:1948年4月7日(日本は1951年に加盟)
- 収 入:3166百万USD (3,324億円、1ドル105円換算、2019年)
- 事業支出:3022百万USD (3,173億円、1ドル105円換算、2019年)
詳しくは次でご紹介します。
WHOとは
目的・概要
世界保健機関 (World Health Organization: WHO) は、「全ての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」を目的として設立された国連の専門機関です。
1948年4月7日の設立以来全世界の人々の健康を守るため、広範な活動を行っています。
現在の加盟国は194カ国です。日本は、1951年5月に加盟しました。(注4)
世界保健機関憲章
「世界保健機関憲章」は、WHOにとっての憲法です。冒頭をここに抜粋します。
健康の定義は、ただ単に病気でないことでなく、「肉体的、精神的・社会的福祉の状態」としています。とても興味深いですね。
じっくり読まれることおススメです。お急ぎの方は太文字の箇所をお読みください。
この憲章の当事国は、国際連合憲章に従い、次の諸原則がすべての人民の幸福と円満な関係と安全の基礎であることを宣言する。
健康とは、完全な肉体的、精神的及び社会的福祉の状態であり、單に疾病又は病弱の存在しないことではない。
到達しうる最高基準の健康を享有することは、人種、宗教、政治的信念又は経済的若しくは社会的条件の差別なしに万人の有する基本的権利の一である。
すべての人民の健康は、平和と安全を達成する基礎であり、個人と国家の完全な協力に依存する。
ある国が健康の増進と保護を達成することは、すべての国に対して価値を有する。
健康の増進と疾病特に伝染病の抑制が諸国間において不均等に発達することは、共通の危険である。
児童の健全な発育は、基本的重要性を有し、変化する全般的環境の中で調和して生活する能力は、このような発育に欠くことができないものである。
医学的及び心理学的知識並びにこれに関係のある知識の恩恵をすべての人民に及ぼすことは、健康の完全な達成のために欠くことができないものである。
公衆が精通した意見を持ち且つ積極的に協力することは、人民の健康を向上する上に最も重要である。
各国政府は、自国民の健康に関して責任を有し、この責任は、充分な保健的及び社会的措置を執ることによってのみ果すことができる。
これらの原則を受諾して、且つ、すべての人民の健康を増進し及び保護するため相互に及び他の諸国と協力する目的で、締約国は、この憲章に同意し、且つ、ここに国際連合憲章第五十七条の条項の範囲内の専門機関としての世界保健機関を設立する。
[出典] 世界保健機関憲章の冒頭
主な事業内容
WHOは、感染症対策として1970年代に天然痘根絶活動を行い、1980年には天然痘根絶宣言を出すことができました。新型インフルエンザ、エボラウイルス病、新型コロナウイルス感染症などの感染症対策において「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」を発出し、世界各国の協力を要請するのも大きな仕事です。
高血圧、肥満、がん対策などにおいて国際的なガイドラインを策定し、予防接種ワクチンの世界的な基準を策定するといった専門的な仕事を行ってきました。「持続可能な開発目標(SDGs)」においては、だれもが必要な時に適切な医療を受けられるような仕組みづくりとしてユニバーサル・ヘルス・カバレージ(UHC)を提唱しています。
WHOのGoodwill Ambassadors(親善大使)として、日本からは笹川陽平氏(日本財団)と武見敬三氏(参議院議員)が活躍しています。(注3)
WHOの具体的な活動分野としては、以下のようなものがあげられます。
- 国際保健事業の指導的かつ調整機関としての活動
- 保健事業の強化についての世界各国への技術協力
- 感染症及びそのたの疾病の撲滅事業の推進
- 医学情報の総合調整
- 保健分野における研究の促進・指導
- 生物学的製剤及び類似の医薬品、食品に関する国際的基準の発展・向上
- 健康関連SDGs目標に到達するために各国を支援
新型コロナウイルス感染症への対応として、WHOは各国や個人に向けた情報提供、感染拡大防止に向けた取り組みなどを行っています。
主な組織
世界保健総会(World Health Assembly)
WHOの最高意思決定機関であり、全加盟国(2019年4月現在194か国・地域と2準加盟地域)で構成され、毎年1回5月にジュネーブにて開催されます。事業計画の決定、予算の決定、執行理事国の選出、事務局長の任命等を行います。(注1)
執行理事会(Executive Board)
総会で選出された34カ国が推薦する執行理事により構成されます。執行理事会の任務は、世界保健総会の決定及び政策の実施、世界保健総会への助言及び提案などです。毎年2回(1月及び総会開催時)行われます。(注1)
地域的機関(Regional Organization)
地域的機関は、加盟国等の代表による意思決定機関である地域委員会と、実施機関である地域事務局からなります。地域的機関は、総会が定める6地域(アフリカ(AFRO)、アメリカ(AMRO)、南東アジア(SEARO)、ヨ-ロッパ(EURO)、東地中海(EMRO)、西太平洋(WPRO))から構成されます。(注1)
事務局(Headquarters, Secretariat)
本部:ジュネ-ブ
事務局長(Director-General):テドロス・アダノム博士(エチオピア)。2017年5月のWHO総会における選挙で当選し、2017年7月に第8代事務局長として就任。元エチオピア外務大臣。
WHOの収支
収入
2019年のWHOの収入は3166百万USD (3,324億円、1ドル105円換算)でした。WHOの収入の48%は加盟国(Member status)から支出されています。そのため、WHOの方針の最高意思決定機関は総会であり、各加盟国の意見が反映されます。
トップ10の支出国/団体は、1位アメリカ、2位イギリス、3位Gavi, the Vaccine Alliance、4位 ビル&メリンダゲイツ財団、5位ドイツ、6位 国連人道問題調整事務所(UNOCHA)、7位 日本、8位 国際ロータリー、9位 世界銀行です。
新型コロナウイルスの感染が拡大する中、アメリカのトランプ政権はWHOに対し、脱退を正式に通知し問題となりました。
一方、野党・民主党のバイデン前副大統領は、11月の大統領選挙で政権を奪還すれば脱退を即座に撤回する考えを示しました。(注3)
11月の大統領選挙の行方は要チェックですね。
支出
2019年の事業支出は3022百万USD (3,173億円、1ドル105円換算)でした。この支出は、事業を行うHeadquarter (事務局)、Regional Office (地域事務局)、Country office (各国事務局)に振り分けられます。2019年、2018年の配分はこちらです。
まとめ
WHOの目的は「全ての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」です。
主な事業内容
- 国際保健事業の指導的かつ調整機関としての活動
- 保健事業の強化についての世界各国への技術協力
- 感染症及びそのたの疾病の撲滅事業の推進
- 医学情報の総合調整
- 保健分野における研究の促進・指導
- 生物学的製剤及び類似の医薬品、食品に関する国際的基準の発展・向上
- 健康関連SDGs目標に到達するために各国を支援
主な組織
- 世界保健総会…最高意思決定機関であり、全加盟国で構成されます。
- 執行理事会…総会で選出された34ヶ国が推薦する執行理事により構成されます。
- 地域的機関…加盟国等の代表による意思決定機関である地域委員会と、実施機関である地域事務局からなります。
- 事務局…常設の組織で、総会の議決に基づき通常業務を行います。
収支
- 2019年のWHOの収入は3166百万USD (3,324億円、1ドル105円換算)でした。収入の48%は加盟国(Member status)から支出されます。ドナートップ5は、1位アメリカ、2位イギリス、3位Gavi, the Vaccine Alliance、4位 ビル&メリンダゲイツ財団、5位ドイツです。
- 2019年の事業支出は3022百万USD (3,173億円、1ドル105円換算)でした。この支出は、事業を行うHeadquarter (事務局)、Regional Office (地域事務局)、Country office (各国事務局)に振り分けられます。
あなたのWHOへの理解のお役に立てれば嬉しいです。
次の記事で会いましょう!
出典
(注1) 世界保健機関(WHO)(概要)2019年4月16日現在
(注3) アメリカ 1年後のWHO脱退を正式通知
(注4) WHOは何をしているの 日本WHO協会
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