- ユネスコの憲章とは?
- ユネスコの活動内容は?
- どのような組織?
の疑問にこたえます。
この記事では、ユネスコの概要、憲章、それに基づく活動内容、活動を実現している組織について分かりやすく解説します。
概要
- 正式名称(英):United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization (UNESCO, 通称:ユネスコ)
- 正式名称(和):国際連合教育科学文化機関
- 設立年 :1945年
- 加盟国数 :加盟国193、準加盟地域11
- 通常予算総額:1,224,746,700米ドル (2018~2019年の2年分)
- 主要国分担率:中国(15.493%),日本(11.052%),ドイツ(7.860%),英国(5.894%),フランス(5.713%)
- 日本の分担額:約31億5千万円 (2019年)
- 職員数 :[全体] 2,243人のうち日本人 55人(2%)、[専門職以上] 616人のうち日本人32人(5%) (注1)
憲章
ユネスコは第二次世界大戦の反省から、終戦直後に設立されました。
当時の世界のリーダーたちが向き合った、「戦争の原因は何だったのか?」「戦争はどうしたら防げるのか?」のこたえがここにあります。
ユネスコの前文は、世界のどこででも、時代が変わっても生きる真理です。
読むだけで、当時のリーダーたちが背負った命の重さが伝わってきます。
お時間がある方は、じっくり読むのがおススメです。ざっと読みたい方は、太文字部分をお読みください。
この憲章の当事国政府は、その国民に代って次のとおり宣言する。
戦争は人の心の中で生れるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない。
相互の風習と生活を知らないことは、人類の歴史を通じて世界の諸人民の間に疑惑と不信をおこした共通の原因であり、この疑惑と不信のために、諸人民の不一致があまりにもしばしば戦争となった。
ここに終りを告げた恐るべき大戦争は、人間の尊厳・平等・相互の尊重という民主主義の原理を否認し、これらの原理の代りに、無知と偏見を通じて人間と人種の不平等という教義をひろめることによって可能にされた戦争であった。
文化の広い普及と正義・自由・平和のための人類の教育とは、人間の尊厳に欠くことのできないものであり、且つすべての国民が相互の援助及び相互の関心の精神をもって果さなければならない神聖な義務である。
政府の政治的及び経済的取極のみに基く平和は、世界の諸人民の、一致した、しかも永続する誠実な支持を確保できる平和ではない。よって平和は、失われないためには、人類の知的及び精神的連帯の上に築かなければならない。
これらの理由によって、この憲章の当事国は、すべての人に教育の充分で平等な機会が与えられ、客観的真理が拘束を受けずに探究され、且つ、思想と知識が自由に交換されるべきことを信じて、その国民の間における伝達の方法を発展させ及び増加させること並びに相互に理解し及び相互の生活を一層真実に一層完全に知るためにこの伝達の方法を用いることに一致し及び決意している。
その結果、当事国は、世界の諸人民の教育、科学及び文化上の関係を通じて、国際連合の設立の目的であり、且つその憲章が宣言している国際平和と人類の共通の福祉という目的を促進するために、ここに国際連合教育科学文化機関を創設する。
[出典] 国際連合教育科学文化機関憲章(ユネスコ憲章)
活動内容
教育、自然科学、人文・社会科学、文化、情報・コミュニケーションの5つの分野における国際的な知的協力や途上国への支援事業を行っています。
この活動を通じて、SDGs(持続的な開発目標)の目標4「質の高い教育をみんなに」の達成を目指しています。
教育分野
教育分野(ユネスコ教育局)では、次の3つの目標を掲げ、その達成のための11の活動を行っています。
目標1:万人のための質の高い包摂的な生涯学習を促進する教育制度の開発の支援
- セクター全体での政策及び計画の強化
- 識字学習の促進
- 職業技術教育・訓練
- 高等教育
- 教員の能力開発の促進を通じた教育の質の向上
- 学習の向上
- 教育におけるICTの活用等を通じたイノベーティブな学習機会の拡大
目標2:学習者に創造性と責任のあるグローバル・シチズン(地球市民)となる力をつける
- 平和と人権のための教育の促進
- 持続可能な開発のための教育(ESD)の強化
- 教育を通じた健康の促進
目標3:教育2030アジェンダの牽引と調整
- パートナーシップ、モニタリング、研究を通じた教育2030アジェンダの牽引と調整
このほか、ユネスコは分野横断的な優先課題として、次の2つに取り組んでいます。
- アフリカでの平等で質の高い適切な教育へのアクセス向上
- 教育システムや学習プロセスを通じたジェンダー平等の推進 (注4)
自然科学分野
自然科学分野(ユネスコ自然科学局)では、加盟国や多様なパートナーとの密接な協力を通じて、平和、持続可能な発展及び人間の安全保障・幸福に貢献するため、科学の推進を行っています。ユネスコは国際連合のなかで、唯一、「科学」に関する権能をもつ機関です。
主な事業はこちら。
- 政府間水文学計画
- 人間と生物圏保存計画
- 国際地質学・ジオパーク計画
- 国際基礎科学計画 (注5)
人文社会科学分野
人文科学分野(ユネスコ人文社会科学局)では、「公正で包摂的な社会のための知の創造と活用」をミッションに掲げています。
現代社会が直面する課題に対し、公共政策の開発により貢献するため、ユネスコの人文社会科学分野の取組みは、世界中の各国のシンクタンクとしての役割を担い、関係者とともに協力して必要な行動を促進します。(注6)
文化分野
文化分野(ユネスコ文化局)では、主に次の事業を行っています。
I 世界の文化遺産の保護
- 世界遺産の保護のための能力開発の強化
- 無形文化遺産の認定と保護
- 文化遺産の保護と修復
- 文化的財産の保護
II 文化政策、文化産業、文化間対話の強化
- 文化政策の開発
- 文化間対話の促進
- 文化産業と工芸の奨励
III 局間横断的事業(他局と共通)
- 貧困、とりわけ極貧(1日の生活費が1米ドル以下)の削減
- 教育、科学、文化の発展及び知識社会の構築のための情報・コミュニケーション技術(ICT)への貢献 (注7)
情報・コミュニケーション局の活動
主に次の事業を行っています。
I 表現の自由に重点を置いた情報と知識のアクセスを通じた人々の能力強化
- 表現の自由とユニバーサルアクセスの促進のための環境の創造
- コミュニティアクセスとコンテンツの多様性の促進
II コミュニケーションの開発及び教育、科学、文化のためのICTの促進
- メディア開発の促進
- 教育、科学、文化におけるICT利用の促進
III 局間横断的事業(他局と共通)
- 貧困、とりわけ極貧(1日の生活費が1米ドル以下)の削減
- 教育、科学、文化の発展及び知識社会の構築のための情報・コミュニケーション技術(ICT)への貢献 (注8)
組織
総会(General Conference)
ユネスコの最高意思決定機関であり、2年に1回開催されます。総会では、ユネスコの活動方針を決定し、事業・予算を承認するほか、事務局長の任命を行います。
執行委員会(Executive Board)
58カ国の政府代表で構成され、年2回開催されます。日本はユネスコに加盟して以来、継続して執行委員国になっています。
事務局
事務局長と職員(約2000人)から構成されています。事務局長は、事業・予算案や活動計画案を作成します。事業分野別の5つの局(教育、自然科学、人文・社会科学、文化、情報・コミュニケーション)といくつかの横断的部局とが管理担当部局と協力して事業を実施しています。(注2)
事務局の中の組織はこちらです。
まとめ
ユネスコの憲章では、第二次世界大戦の反省から「戦争は人の心の中で生れるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない。」と定めています。
活動内容は、教育、自然科学、人文・社会科学、文化、情報・コミュニケーションの5つの分野における国際的な知的協力や途上国への支援事業を行っています。
組織は大きく次の3つから構成されます。
- 総会:ユネスコの最高意思決定機関であり、2年に1回開催されます。
- 執行委員会:58か国の政府代表で構成され、年2回開催されます。
- 事務局:事務局長と職員(約2000人)で構成されています。
ユネスコへの理解にお役に立てれば嬉しいです。
頑張るあなたを応援しています!次の記事で会いましょう!
出典
(注1) ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の概要 2020年3月12日
(注2) ユネスコの組織
(注3) 日本ユネスコ協会連盟
(注4) ユネスコ教育局の活動
(注5) ユネスコ自然科学局の活動
(注6) ユネスコ人文社会科学局の活動
(注7) ユネスコ文化局の活動
(注8) ユネスコ情報・コミュニケーション局の活動
コメント